「氷壁」の「モシカアル日」2006/03/04 23:05


先にも書いたが、NHKドラマ「氷壁」を見て、自分の記憶と著しい違いがあるように感じて、本を再び読んだのである。
ドラマをよく見ると確かに「井上靖『氷壁』原案の」ドラマと書いてあるので、原作と違っているわけだ。
だからと言って「氷壁」を名乗るのだから、こんなに主題から離れて良いとも思えない。
ドラマに感じた一番の違和感は、小説では重要な役割を担っている「常盤大作」が出てこない点である。
彼が出演しないことで、この物語の重要な解説者を欠く事になってしまったのだ。
まあ、それは良い。ドラマだからだ。K2も綺麗だし、別な物語として見ればそこそこ面白い。

しかし私は、小説の中の一部をここに載せる事によって、原作を称えようと思うのだ。
小坂の好きなデュプラの『モシカアル日』
モシカアル日、
モシカアル日、私ガ山デ死ンダラ、
古イ山友達ノオ前ニダ、
コノ書置ヲ残スノハ。
オフクロニ会イニ行ッテクレ
ソシテ言ッテクレ、オレハシアワセニ死ンダト。オレハオ母サンノソバニイタカラ、チットモ苦シミハシナカッタト。
親父ニ言ッテクレ、オレハ男ダッタト。
弟ニ言ッテクレ、サアオ前ニバトンヲ渡スゾト。
女房ニ言ッテクレ、オレガイナクテモ生キルヨウニト。オ前ガイナクテモオレガ生キタヨウニト。
息子タチヘノ伝言ハ、オ前タチハ「エタンソン」ノ岩場デ、オレノ爪ノ跡ヲ見ツケルダロウト。
ソシテオレノ友、オ前ニハコウダ―
オレノピッケルヲ取リ上ゲテクレ。
ピッケルガ恥辱デ死ヌヨウナコトヲオレハ望マヌ。
ドコカ美シイフェースヘ持ッテ行ッテクレ。
ソシテピッケルノタメダケノ小サイケルンヲ作ッテ、ソノ上ニ差シコンデクレ。

「モシカアル日」は「いつかある日」2006/03/05 22:05

「モシカアル日」
どこかで聞いたことのある詩だと思っていたら、小学校の山の遠足で歌うことがあった「いつかある日」の元の詩であった。
昨日の「氷壁」の話を妻にしたところ、いきなり歌いだした。
その歌を聴いて、記憶のはるか底からかすかに思い出した次第である。
歌詞の中で「ピトン」はわかりづらいかもしれない。「ハーケン」と言ったほうが一般に通っている。

「いつかある日」
深田久弥 作詞<ロジェ・デュプロ原詞> 西前四郎 作曲

いつかある日 山で死んだら
古い山の友よ 伝えてくれ

母親には 安らかだったと
男らしく死んだと 父親には

伝えてくれ いとしい妻に
俺が帰らなくても 生きて行けと

息子たちに 俺の踏み跡が
故郷の岩山に 残っていると

友よ山に 小さなケルンを
積んで墓にしてくれ ピッケル立てて

俺のケルン 美しいフェイスに
朝の陽が輝く 広いテラス

友に贈る 俺のハンマー
ピトンの歌声を 聞かせてくれ