「ダンテの遺言」谷川悠里2016/09/01 21:05

天文学者ダスコリが焼かれている地獄の門

ダンテの『神曲』の直筆原稿を軸に、物語が展開してゆく。
晩年のダンテが残した禁書がある、という設定。
ニコラウス・コペルニクス(1473-1543)よりも300年も前に、「地動説」を唱えて火刑に処せられたチェッコ・ダスコリ(1280-1327)。その時代にダンテ・アリギエーリ(1265-1321)は生きた。
コペルニクスの地動説は禁書にならず、教皇たちを「神曲」で地獄に落としたダンテも、異端審問に問われることはなかった。
それなのに異端審問にかけられたガリレオ(1564-1642)は言う。「あなたがたは、ほんとうに神の叡智と能力が、われわれが認識できる、このささやかな世界への配慮のみに限定されているものとお考えか。むしろわたくしは、宇宙を創った両腕が、それほど短いものであるとはどうしても思いたくない。」
異端審問官の心は、この弁舌にも動かされることはなかった。

ところで、世界遺産の西洋美術館。その庭にあるロダンの「地獄の門」。
天地をひっくり返そうとした天文学者ダスコリが焼かれている。彼は頭から逆さに地面にのめりこんでいる。