「ダンテの遺言」谷川悠里2016/09/01 21:05

天文学者ダスコリが焼かれている地獄の門

ダンテの『神曲』の直筆原稿を軸に、物語が展開してゆく。
晩年のダンテが残した禁書がある、という設定。
ニコラウス・コペルニクス(1473-1543)よりも300年も前に、「地動説」を唱えて火刑に処せられたチェッコ・ダスコリ(1280-1327)。その時代にダンテ・アリギエーリ(1265-1321)は生きた。
コペルニクスの地動説は禁書にならず、教皇たちを「神曲」で地獄に落としたダンテも、異端審問に問われることはなかった。
それなのに異端審問にかけられたガリレオ(1564-1642)は言う。「あなたがたは、ほんとうに神の叡智と能力が、われわれが認識できる、このささやかな世界への配慮のみに限定されているものとお考えか。むしろわたくしは、宇宙を創った両腕が、それほど短いものであるとはどうしても思いたくない。」
異端審問官の心は、この弁舌にも動かされることはなかった。

ところで、世界遺産の西洋美術館。その庭にあるロダンの「地獄の門」。
天地をひっくり返そうとした天文学者ダスコリが焼かれている。彼は頭から逆さに地面にのめりこんでいる。

年末年始向け児童書商談会2016/09/16 22:42

MOE編集長 講演会

はじめは、知り合いの児童書出版社10社程度の合同商談会だったのだが、昨年は26社、今年は34社と出展社が増え続けている。
書店もNET21以外の書店も増えて50店舗ほど。
開場からブースを回りつづけ、講演会までいてくれる熱心な児童書担当者も多い。
会場は御茶ノ水のワテラスコモンを借りたのだが、これ以上出展社が増えたら、会場を探すのがさらに難しくなる。
しかし、あまり知られていない児童書出版社に、書店の仕入れ担当者が多く集まっている傾向もあるので、どうしたものだろうか。

児童書商談会後の懇親会2016/09/19 17:15

中締めの挨拶を聞く
大概の懇親会は、仕事についての話題は少ない。
親が某田舎出身とか、自身がどこそこの出身だ、などと出身地の話で盛り上がったりする。
民家でそばを食べさせてくれる村があるとか、すごく景色の良い池の話など、その時は覚えているつもりでも、翌日には具体的な名称はすべて忘れていることの方が多い。
だから、気になる話は手帳にメモすることにしているが、このメモがまた何のことやらわからないこともあったりする。
わたしの出身地の隣村が母親の出身地だった出版社営業の話は記憶に残る。
今年入社したばかりの某出版社女性も長野県人であった。
さらには高校の後輩に「先輩」などと言われることもあった。
そんな時は、すでに故郷を離れて40年以上経つのに「長野」というキーワードに強く反応している自分を再認識するのである。

ロベルトからの手紙2016/09/20 22:05

羽根の生えたヘルメスの足
内田洋子の本の表紙は絵が多いが、今回は木彫りの足の写真だ。
あとがきに、彫刻家にこの羽の生えた足を注文する手紙が載っている。

イタリアにおける様々な人生模様。
深く彩られた哀しみを、余韻の残る文章で切り取られた、異国の物語。

それらと比べると、私の周りにはあまりに単調な人生しか見えてこない。
ふと、自分の立ち位置が、変わってしまったことを思う。
さあ、最初の一歩を踏み出せ!という声が聞こえた。